PXを評価する
Evaluate PX
◤2つの評価アプローチ
①量的アプローチ
PX尺度を用いたサーベイを実施し、PXを数値として定量化し、比較や分析を行う手法です。
②質的アプローチ
PXを数値として評価するのではなく、患者の言葉や観察した事象といった質的データを分析する手法です。
2つのアプローチは相補的であり、どちらも重要なPXの評価法です。
→詳細は参考文献1を参照

◤量的アプローチ
PXの評価法として、最も良く用いられる手法は、PX尺度を使用したサーベイです。
一般的にPX尺度は、測定の妥当性や信頼性が、科学的に検証されています。
PX尺度には、セッティングや評価目的に合わせて、様々な種類が存在します。
本サイトに掲載されているJPCATやCAHPSは、検証が実施されたPX尺度です。

◤PXサーベイの分析法①
基本的な分析として、施設ごとに平均値や中央値といった代表値(要約統計量)を算出し、他施設の結果と比較する方法があります。
多施設のベンチマークデータがあれば、それを基準として、自施設の位置を把握することも可能です。
また、過去の自施設のデータがあれば、経時的な変化を見ることも可能です。
→詳細は参考文献2を参照

◤PXサーベイの分析法②
2つ以上の指標を組み合わせた多次元の分析も可能です。
例えば、Priority Matrix は、各施設における質改善の優先課題を決定する一つの手法であり、図の縦軸にPXスコアと医療機関に対する総合的評価との相関係数を、横軸にPXスコアのパーセンタイル順位をプロットします。 そのうえで優先順位の高い質改善の領域、すなわち総合的評価との相関が高く、他の施設と比較しスコアが低い領域を特定するアプローチです。
→詳細は参考文献2を参照

◤質的アプローチ
PXの質的調査として最も良く用いられる手法は、インタビューです。
患者に個別インタビューを実施する方法と、数人の患者グループに対してインタビューを実施する方法(フォーカスグループ)があります。後者の利点は、患者同士の相互作用により、データに発展性が期待できる点です。
他にもエスノグラフィ(フィールドワークによって医療者や患者の行動を観察)などを用いることがあります。
→具体例は参考文献3,4を参照

◤Patient Journey
Patient Journeyは、患者がケアプロセスで辿る一連の道のりであり、縦断的なPXといえます。
Patient Journey Mappingは、PXを左右するキープロセスを同定し、改善策を検討する手法です。対象となる仮想患者像(ペルソナ)を設定し、患者の視点でケアプロセスを辿っていきます。Mappingの際に全ての職種が関わるのが重要です。
→詳細は参考文献5を参照

参考文献
LaVela S, Gallan A. Evaluation and Measurement of Patient Experience. Patient Exp J. 2014;1(1):28-36.
Agency for Healthcare Research and Quality. CAHPS Ambulatory Care Improvement Guide. https://www.ahrq.gov/sites/default/files/wysiwyg/cahps/quality-improvement/improvement-guide/cahps-ambulatory-care-guide-full.pdf
Aoki T, Urushibara-Miyachi Y. A qualitative study of socially isolated patients’ perceptions of primary care. J Gen Fam Med. 2019;20(5):185-9.
Kinoshita H, Aoki T【equally contributed】, Motoki H, Wakita T, Onishi Y, Watanabe-Fujinuma E, Kuwahara K. Patient journey and disease-related burden in Japanese patients with chronic thromboembolic pulmonary hypertension: A mixed methods study. Value Health Reg Issues. 2021;24(C):17-23.
Trebble TM, Hansi N, Hydes T, Smith MA, Baker M. Practice pointer: Process mapping the patient journey: An introduction. BMJ. 2010;341:c4078.