PXを向上させる
Improve PX
◤PX評価の活用レベル
PXは評価して終わりではなく、医療の質向上のために、その結果を活用する必要があります。PX評価の活用レベルは以下の3つに分類されます。
Level 1
PX評価の結果をスタッフで共有するのみ
Level 2
PX評価でパフォーマンスが低かったスタッフや部門を対象とした質改善活動
Level 3
PX評価に基づく、多職種・多部門が関わる医療機関全体の質改善活動
Level 3が最も効果的であり、目標とすべき活用レベルです。
→詳細は参考文献1を参照

◤キープロセスの同定
PX評価の結果をもとに、改善に取り組むキープロセスを同定します。例えば以下のプロセスが候補になります。
量的アプローチであるPXサーベイで他施設よりスコアが低値だった領域、自施設で経時的な低下がみられる領域、あるいはPriority Matrixで優先課題と特定された領域
質的アプローチであるインタビューやエスノグラフィで特定された課題、あるいはPatient Journey Mappingで特定されたキープロセス
→詳細は参考文献2を参照

◤PX評価に基づく質改善手法①
Six Sigma
元々はモトローラ社やGE社が展開した質改善手法です。医療機関の質改善にも活用されています。PXと相性の良い質改善手法です。
Six Sigma のキーワード
VOC: Voice of Customer
患者の声を最も重要視
CTQ: Critical to Quality
VOCを基に質改善の方針を決定
SIPOC: Supplier, Input, Process, Output, Customer
プロセスの明確化とメンバーの選定
DMAIC
シックスシグマのコアツールであり、データ駆動型の改善サイクル
→詳細は参考文献3を参照

◤PX評価に基づく質改善手法②
Experience Based Co-design (EBCD)
PX評価の結果をもとに、患者・住民と医療者が協働して質改善を行う手法です。
EBCDでは、患者はデータソースだけではなく、質改善チームの一員です。
EBCDの6ステップ
プロジェクトの立ち上げ
インタビューと観察を通して、スタッフのエクスペリエンスを評価
インタビューを通して、患者・介護者のエクスペリエンスを評価
スタッフと患者・介護者でサービスのエクスペリエンスを共有し、改善の優先課題を特定
患者とスタッフで構成される小グループが、3〜4か月かけて特定された優先課題(通常4〜6つ)に取り組む
プロジェクトの総括
→詳細は参考文献4を参照

当サイト運営者が世話人を務める日本ペイシェント・エクスペリエンス (PX)研究会では、PXの評価・向上を担う人材の育成を目的とし、
PXE(Patient eXperience Expert)養成講座を開講しています。
参考文献
Friedberg MW, SteelFisher GK, Karp M, Schneider EC. Physician groups’ use of data from patient experience surveys. J Gen Intern Med. 2011;26(5):498-504.
Agency for Healthcare Research and Quality. CAHPS Ambulatory Care Improvement Guide. https://www.ahrq.gov/sites/default/files/wysiwyg/cahps/quality-improvement/improvement-guide/cahps-ambulatory-care-guide-full.pdf
迫田勝明ほか. 図解シックスシグマ流 “強い現場”をつくる「問題解決型」病院経営. 日本医療企画. 2006.
Robert G, Cornwell J, Locock L, Purushotham A, Sturmey G, Gager M. Patients and staff as codesigners of healthcare services. BMJ. 2015;350:g7714.